introduction
“Nゲージのパイオニア”KATOが英国PECO社と作った、ナローゲージ
OO-9 SMALL ENGLAND LOCOMOTIVE
「NゲージのKATO」が初めて挑んだナローゲージは、英国らしいサドルタンクを背負った愛らしい姿のスモールイングランドクラス。この企画は2018年2月、PECO社のある英国南西部のデヴォン州に訪れた時から始まりました。ナローゲージの開発を考えていた私たちに光明を与えてくれたのはPECO社でした。新しいスケールの蒸気機関車ですから、新しいモーターも必要です。しかし日本よりも長い鉄道と鉄道模型の歴史を持つ英国でも最も老舗と云えるPECO社のバックアップがあれば、時間がかかったとしてもKATOのOO-9は完成すると確信できました。
18.8.2019 CAERNARFON STATION
なぜ英国のナローゲージなのか? という質問をよくいただきます。シンプルに言って仕舞えば、それは鉄道のルーツや鉄道にまつわる文化の今昔は、全て英国に求められると云えるからです。今でも100を超える鉄道遺産(保存鉄道)が各地にあり、そのほとんどは地域のボランティアによって運営されています。駅カフェの運営、保線作業、線路際の植栽、運転、清掃、車掌業務、グッズの制作など、その全てを「鉄道を愛する人」たちが担っています。本線で活躍を終えた車両はそういった地域に愛される鉄道遺産の場所に移り、新たな息吹を得て走り続けることが許されます。
また多くの鉄道遺産には蒸気機関車やディーゼル機関車を修理したり、新造することができる機関庫(Engine Shed)があります。今回製品化したスモールイングランドのように、原型は100年以上前のものですが、近年になり作り直された蒸気機関車も存在します。蒸気機関で動く農耕機などのコレクションを持ち寄るイベントも頻繁に開催されるほど、過去のものとはなっていません。住宅などは古いものほど価値があり、築100年超えてからの建築物の方が相場が高いといいますから、日本とは全く逆ですね。
古いものが大好きな英国人。ダーニングと呼ばれる刺繍技術でもわかるように、古いものにこそ愛着があり、自分なりの修理を施して使い続けてゆく愉しみ方を教えてくれる文化を持つ国。そんな国の機関車を作ってみたい。英国人に愛される鉄道模型を作ってみたい。スモールイングランドはそうして生まれ、関水金属新工場の“関水本線”やKATO Railway Parkも誕生することになったのです。